前提:身体への反動(衝撃荷重)を無くすには
- 落ちない(自由落下を許容しない)
- 万が一落ちてしまった(自由落下が発生してしまった場合)場合は、衝撃荷重を逃がす工夫をする
→方策はふたつ
- 停止時間を長くとる
- 停止距離に限界がある場合、積極的に運動エネルギー→別エネルギーの変換を試みる
○ライン(ロープ)を2つにする意味
目的:メインロープ(ポジショニングシステム)が破断した際に墜落を制止する。
このとき、バックアップ側のロープには、即座に体重が移行しなければいけない。逆に自由落下が発生してしまった場合には、身体に反動がない方法で停止させなければいけない。
○アンカーを2つにする意味
目的:メインアンカーが破断した際に墜落を制止する。
片方のアンカーが破断した際、もう一つのアンカーに即座にかけ変わる必要がある。逆に自由落下が発生してしまった場合には、身体に反動がない方法で停止させなければいけない。
バックアップロープが正しく機能しない場面
産業用ロープアクセスでは、ロープアクセス機材3点セット(EN12841 Type A,B,C)として
- アッセンダー
- ディッセンダー
- フォールアレスター
を組み合わせて使うことになっている。
さて、フォールアレスターを設置するバックアップロープ(ライフライン)にはテンションが乗らないことが望ましいということになっている。これはテンションの乗っていないロープは、切断・摩耗の可能性が低くなるという原理に基づいている。テンションの乗ったメインロープ(ポジショニングライン)が切れたとき、脊椎が比較的抵抗性を持っている方向で墜落を制止しようという寸法だ。
その1
本人が、病気や感電によって意識を失った場合はどうだろう?この場合はゆるやかに上半身が脱力→傾倒するため、バックアップロープ(ライフライン)の意図する挙動から外れ、頭部が下がってしまう。この場合に残されたレスキュータイムは比較的短いものと想定する。
その2
中間セット(リビレイやディビエーション)アンカーが破断してしまった場合はどうだろう?この場合は、墜落は発生するもののフォールアレスターが動作できないという状況に陥る。仮に上部に存在するアンカーに荷重がうまくかけ変わったり、下方にある何か別のものにロープがうまく引っかかって止まったとして、その時衝撃荷重がかかるのはメインロープ(ポジショニングライン)側となる。このとき、身体が許容できない衝撃荷重がメインアタッチメント付近にかかることは想像に易い。
少しマニアックに聞こえるかもしれないが、厳しい環境で作業をするのであれば、これらを前提としたシステム構築は必要不可欠になってくるだろう。
Posted by norimitsu.i at 7:29 日時 2021/04/14
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